「オランダに住んでいても、春になると桜が恋しくなる」——そんな在外日本人の心に寄り添うように、アムステルダムには本格的なお花見ができる場所があります。
その名はケルセンブルーセム公園(Kersenbloesempark)。アムステルダム郊外の広大な森「アムステルダムセ・ボス(Amsterdamse Bos)」の中に、日本の桜が400本、一面に咲き誇る特別な公園です。
桜の木々の下、ピンクの花びらが芝生を覆い尽くす光景は、日本の花見の風景と寸分変わらぬ美しさ。オランダ在住6年で見続けてきたこの場所の魅力を、たっぷりお伝えします。
なぜオランダに400本の桜があるのか
この公園が誕生したのは2000年。日本とオランダの国交樹立400周年を記念して、日本からオランダへ400本の桜の木が贈られたことがきっかけです。この贈り物を実現したのは、オランダ在住の日本人女性ボランティア団体「JWC(Japan Women’s Club)」で、桜の木はアムステルダムの森の一角に丁寧に植えられました。

400本という数字は400周年という節目を象徴するもの。さらに心温まるのが木への命名で、200本には日本人女性の名前、残る200本にはオランダ人女性の名前が一本ずつ付けられています。日蘭両国の人々が等しく名を連ねるこの公園は、単なる観光地ではなく、ふたつの国の友好の証として存在しています。

公園の様子:芝生に降り積もるピンクの花びら
公園に足を踏み入れると、整然と並んだ桜の木が出迎えてくれます。日本の染井吉野に似た淡いピンクの花が咲き乱れ、遠くから眺めるとピンクの雲が地上に降りてきたかのような幻想的な光景が広がります。

満開を少し過ぎた頃の光景がまた格別です。青々とした芝生の上に、散った花びらがうっすらとピンクの絨毯を作り、木の幹の周りが特に美しく色づきます。日本では「花吹雪」と呼ぶあの光景が、オランダの空の下でも同じように繰り広げられます。
公園内は芝生が広く整備されており、レジャーシートを敷いてゆっくりお花見をするにも最適な環境です。日本のお花見文化を知るオランダ人も多く、地元の人々も花の下でピクニックを楽しんでいます。
芝生に刻まれた碑—3.11の記憶
この公園には、忘れてはならない一角があります。桜の木々に囲まれた芝生の中に、ひっそりと置かれた黒御影石の慰霊碑です。

碑にはオランダ語と日本語でこう刻まれています。
11 MAART 2011
TER NAGEDACHTENIS AAN DE SLACHTOFFERS EN GETROFFENEN VAN DE AARDBEVING EN TSUNAMI IN JAPAN
2011年3月11日
東日本大震災により被災された方々を悼んで
桜の花びらが散り積もる碑の上には、訪れた人々が手向けた花束が置かれていました。日本から遠く離れたオランダの地に、あの日を忘れないというメッセージが静かに刻まれています。花見の喜びと、震災への哀悼が同じ場所に共存するこの光景は、この公園を単なる観光スポット以上の存在にしています。
開花時期とアクセス
見頃は3月末〜4月上旬
オランダの桜の開花時期は日本とほぼ同じで、3月末から4月上旬がピークです。ただしオランダの春の天候は変わりやすく、年によって1〜2週間前後することがあります。訪問前にSNSで「Kersenbloesempark」と検索すると現地の開花状況がわかります。
アクセス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | Amsterdamse Bos, Amstelveen(アムステルフェーン) |
| 入場料 | 無料 |
| アクセス | アムステルダム中心部からトラム25番または電車でアムステルフェーン方面へ |
| 駐車場 | あり(有料) |
アムステルダムの森(Amsterdamse Bos)は広大な公園で、自転車での訪問が最もおすすめです。自転車レンタルをして森の中を走りながら桜を目指すのも、オランダらしい楽しみ方のひとつです。
公式情報はアムステルダムセ・ボス公式サイト(英語)で確認できます。
アムステルフェーン市街にも!トラム終点近くの桜並木
ケルセンブルーセム公園から少し足を伸ばすと、もうひとつの桜スポットがあります。アムステルフェーン(Amstelveen)の市街地中心部、トラム終点駅のすぐそばに伸びる桜並木です。

こちらは公園の中ではなく、運河沿いの街路に桜が植えられた都市型の花見スポット。両側に桜の木が並ぶ遊歩道と、ゆったりと流れる運河、そしてベンチが点在する落ち着いた空間は、散歩にもひと休みにも最適です。
見頃を過ぎた頃の光景がまた格別で、道一面に散った花びらがピンクの絨毯を作り出します。遊歩道全体がほんのりピンクに染まる様子は、まるで日本の桜の名所と見紛うほど。運河の水面に浮かぶ花びらも風情があります。
アクセスはアムステルダム中心部からトラム25番の終点・Amstelveen Binnenweg駅を降りてすぐ。ケルセンブルーセム公園からも自転車や徒歩で向かいやすい距離にあります。
公園ほど混雑せず、地元の人がのんびり散歩する穴場的なスポットです。ケルセンブルーセム公園と合わせて、ぜひ両方立ち寄ってみてください。
日本人在住者に愛される場所
オランダに暮らす日本人にとって、ケルセンブルーセム公園は特別な場所です。毎年春になると在蘭邦人のコミュニティでお花見の呼びかけが行われ、振袖を着て訪れる方も少なくありません。
「日本から遠くても、桜の下に来るとふるさとに帰ったような気持ちになる」——そう語る在住者の声を何度も聞いてきました。
移住を考えている方も、旅行でオランダを訪れる方も、春に来る機会があればぜひこの公園へ。400年の友好の歴史と、震災への追悼と、桜の美しさが交差する、オランダ屈指の特別なスポットです。


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