オランダに移住して最初に驚いたことのひとつが、街のあちこちにある独特の雰囲気のカフェでした。薄暗くて、木の壁が飴色に変色していて、古びたビール瓶や看板が飾られている——日本でいう「カフェ」とは全く異なる空間です。
これがオランダが誇る「ブラウンカフェ(Bruine Kroeg:ブルーネ・クルーフ)」、直訳すると「茶色いカフェ」です。アムステルフェーンに10年以上住んで何度も足を運んだ私が、オランダのカフェ文化をたっぷりご紹介します。
ブラウンカフェ(Bruine Kroeg)とは何か?
ブラウンカフェとは、オランダ独自のパブスタイルのカフェです。「ブルーネ(Bruine)」はオランダ語で「茶色い」という意味で、その名の通り、長年のタバコの煙や木材の経年変化によって壁や天井が茶色く染まった店内が特徴です。
歴史は17世紀にまでさかのぼります。オランダが「黄金時代」と呼ばれる経済的繁栄を誇っていた頃、アムステルダムの商人たちが集まり、ビールを飲みながら商談や情報交換をした場所がその原型です。以来400年以上、ブラウンカフェはオランダ人の日常生活に欠かせない社交の場として根付いてきました。
ブラウンカフェの特徴
ブラウンカフェには明確な「らしさ」があります。まず内装は、木製の重厚なカウンター、飴色に染まった壁、古いランプやビール瓶のオブジェ、クラシックな雰囲気が漂うインテリアです。LEDの明るい照明とは無縁の、落ち着いた薄明かりの中でビールを楽しむ空間です。
提供するのは基本的にビールとジェネバー(オランダ発祥のジン系蒸留酒)が中心で、食事は簡単なおつまみ程度のところが多いです。オランダ語で「Bitterballen(ビッターボーレン)」という揚げコロッケや、ゆで卵、チーズなどが定番のつまみです。
ジェネバーとは?ブラウンカフェで飲むべき一杯
ブラウンカフェでぜひ試してほしいのが「ジェネバー(Jenever)」です。ジンの祖先とも言われるオランダ発祥の蒸留酒で、大麦やライ麦を原料に作られます。イギリスのジンと混同されがちですが、ジェネバーのほうが香りが穏やかで、まろやかな甘みがあります。
オランダでは「Jong(ヤング=若い)」と「Oud(アウド=古い)」の2種類があり、OudはJongより熟成が進んでいてより深いコクがあります。小さなショットグラスになみなみと注がれ、グラスを持ち上げずにその場でひと口すするのがオランダ流の飲み方です。
私が実際に訪れたブラウンカフェ&おすすめビアバー
De Drie Fleschjes(デ・ドリー・フレッシェス)|創業1650年!まさに生きた博物館
私が最も印象に残っているブラウンカフェのひとつがここです。名前は「三つのボトル」という意味で、なんと1650年創業。アムステルダムのダム広場に隣接する新教会のすぐ裏手にあります。
店内に入ると、もはやミュージアムのような光景が広がります。年代物の樽が壁一面に並び、古びたビアサーバーのてっぺんにはロウソクが立ち、固まったロウが時代の重みを感じさせます。
かつてはGrolschビールやホテルなどが自分の樽をここに置き、従業員が鍵を持って飲みに来たという歴史があります。今ではそのほとんどは使われていませんが、樽には今もその名残が見られます。
ジェネバーをぜひ試してほしい一軒です。常連のおじさんに「いいからジェネバー飲んでみろ」と勧められ、一口もらいましたが、おいしい反面、私にはちょっと強すぎました(笑)。子供連れで来ても色鉛筆で絵が描けるコーナーがあり、意外とファミリーフレンドリーな一面もあります。
基本情報 住所:Gravenstraat 18, 1012NM Amsterdam 営業時間:毎日 14:00〜20:30(日曜は15:00〜19:00) 公式サイト:www.dedriefleschjes.nl
【関連記事】創業1650年のブラウンカフェ、ジェネバーもおいしい、De Drie Fleschjes
Gollem’s Proeflokaal(ゴレムズ・プルーフロカール)|170種類のビールとうまい料理
私が最もリピートしているお気に入りのビアバーです。「Proeflokaal」はオランダ語で「試飲所」という意味で、まさにビールを試すための場所。ドラフトビール(生ビール)14種類を含む170種類ものビールが楽しめます。
特に好きなのがGollem特製のIPA(インディア・ペール・エール)。ホップの香りが豊かで、苦みも強く、私が最も愛するビールスタイルです。IPAはワインのように香りを楽しみながら、少しずつ味わって飲むのがおすすめです。
大好きなTroubadour(トルバドゥール)のIPA「Magma」も置いてあり、これはぜひ一度試していただきたい一本です。
料理も充実しているのがGollemの魅力で、黒ビールで煮込んだベルギー風牛肉シチュー「Flemish Stew(15.5ユーロ)」は絶品です。トラピスト修道会のチーズを使ったフォンデュ(15.5ユーロ)も外せません。ホームメイドのチーズケーキ(5ユーロ)は濃厚でとろけるような味わいで、これも必食です。
金曜の夜は非常に混雑し、お客さんのざわめきで会話も難しいほどになります。静かにのんびり楽しみたい方は平日の早い時間帯がおすすめです。
アムステルダム内の店舗
- Gollem’s Proeflokaal:Overtoom 160-162, 1054HP(料理あり・最もおすすめ)
- Cafe Gollem:Raamsteeg 4, 1012VZ
- Cafe Gollem 2:Daniel Stalpertstraat 74, 1072XK(毎週火曜PubクイズあRり)
- Cafe Gollem Amstelstraat:Amstelstraat 34, 1017DA
営業時間:月〜木 13:00〜1:00 / 金・土 12:00〜3:00 / 日 12:00〜1:00 公式サイト:cafegollem.nl
【関連記事】ダム広場近くにあるブラウンバーCafe Belgique
Arendsnest(アレンズネスト)|オランダ産地ビールだけ!30種類の生ビール
ヘーレングラハト(紳士の運河)沿いにある、オランダ国内産のビールだけを取り扱うという珍しいビアバーです。30種類の生ビールと100種類のボトルビールがすべてオランダのクラフトビールというこだわりの一軒で、店内は落ち着いた雰囲気のブラウンバースタイルです。
「オランダってどんなビールを作っているの?」という疑問を解消するにはここが最適。バーテンダーに好みを伝えれば丁寧におすすめを教えてもらえます。
基本情報 住所:Herengracht 90, 1015BS Amsterdam 営業時間:毎日 14:00〜0:00(金・土は〜2:00) 公式サイト:www.arendsnest.nl
De Bekeerde Suster(デ・ベカーデ・シュスター)|自家醸造ビールが飲める修道院カフェ
「改心した修道女」という不思議な名前のブラウンバーで、自家製ビールが楽しめるブリューワリーパブです。おすすめは3種類の自家製ビール:Witte(ヴィッテ)、Blonde(ブロンド)、Manke Monnik(マンケ・モニク)。私のイチ押しは「Manke Monnik」です。
料理も充実していて、スペアリブやサーモン料理、ステーキなど幅広いメニューがあります。日本から友人や親戚を案内するときに連れて行くと喜ばれる、雰囲気と料理のバランスが良い一軒です。
【関連記事】久しぶりにDe Bekeerde Susterに行ってきた
Cafe Belgique(カフェ・ベルジーク)|ダム広場そばで100種類以上のビール
ダム広場に近い場所にある、100種類以上のビールが楽しめるブラウンカフェスタイルのビアバーです。特にカウンターに並ぶドラフトビールはどれもおいしく、IPAを注文したところ最高の一杯でした。ビールの種類が多いだけでなく、ビービール(瓶ビール)のラインナップも素晴らしく、友達とアムステルダム観光をするついでに立ち寄るのに最適な場所です。
基本情報 住所:Gravenstraat 2, 1012NM Amsterdam 営業時間:月〜水 15:00〜1:00 / 木・日 13:00〜1:00 / 金・土 13:00〜3:00 公式サイト:cafe-belgique.nl
ダム広場近くにあるブラウンバーCafe Belgique
ユトレヒトの隠れた名店|Belgisch Bier Cafe Olivier(ベルジッシュ・ビア・カフェ・オリヴィエ)
アムステルダムから電車で30分のユトレヒトには、教会を改装したという圧巻のビアカフェがあります。高い天井にパイプオルガン、重厚な木造の内装は「ここはカフェなのか?」と思わせるほどの迫力です。70種類のベルギービールと本格的なベルギー料理が楽しめます。
特におすすめは「Ham on the bone(骨付きハムの丸焼き、19.5ユーロ)」。外がカリカリで中はジューシーなハムをガッツリと食べながらビールを飲む体験は格別です。17時以降にディナーメニューが始まりますので、夕方以降の来店がおすすめです。
基本情報 住所:Achter Clarenburg 6a, 3511JJ Utrecht 営業時間:日・月 11:00〜24:00 / 火・水 10:00〜24:00 / 木〜土 10:00〜2:00 公式サイト:utrecht.cafe-olivier.be
ダム広場近くにあるブラウンバーCafe Belgique
ブラウンカフェと「コーヒーショップ」の違い
オランダを訪れる方が混同しがちなのが「ブラウンカフェ」と「コーヒーショップ」です。
ブラウンカフェはあくまでビールやお酒を楽しむ正統派のパブです。一方、オランダで「コーヒーショップ(Coffeeshop)」といえば、大麻製品を合法的に販売・提供する特別なお店を指します(コーヒーを飲む場所ではありません)。観光で訪れる方には特に重要な知識です。
普通のコーヒーを飲みたいなら「カフェ(Café)」または「エスプレッソバー(Espressobar)」と書かれたお店へどうぞ。
ブラウンカフェの楽しみ方|3つのポイント
カウンターに座る ブラウンカフェはカウンターに座るのが一番楽しい場所です。バーテンダーやほかのお客さんと自然と会話が生まれ、オランダのローカルな雰囲気を肌で感じることができます。
まずHeineken以外のビールを試す オランダといえばHeineken(ハイネケン)が有名ですが、実はブラウンカフェやビアバーでハイネケンを注文するのは「通ではない」と思われることもあります。バーテンダーにおすすめを聞いて、クラフトビールやトラピストビールを試してみてください。
つまみはBitterballenを頼む ブラウンカフェの定番おつまみ「Bitterballen(ビッターボーレン)」は、揚げたてのコロッケです。外はサクサク、中はとろとろの肉系フィリングが入っており、ビールとの相性は抜群。オランダ在住者・旅行者問わず、まず一度は試してほしい一品です。
まとめ
ブラウンカフェは単なる飲み屋ではなく、何百年もの歴史を持つオランダの文化そのものです。木の壁に染み込んだ歴史と、常連のおじさんたちのおしゃべり、手書きのビールメニュー——すべてがオランダらしさに溢れています。
観光でアムステルダムを訪れた際も、移住してすぐの方にも、まずは一軒ブラウンカフェに入ってみることを強くおすすめします。「オランダって、こういう国なんだ」という感覚がじんわりと伝わってくるはずです。


コメント